一通りのことを決めると、みつやは早速歩き出した。
いざ行動を始めると、みつやは素早く、正確になる。その証拠にみつやは脇目も振らず、偏に突き進んでいく。不安定な地面に
脚を取られたり、行き先に悩んだりしない。規則正しく、一定の歩調を維持する。それは、まるで精密機械のようだった。
春信はそんなみつやの後姿を見つめながら、低く呟いた。
「さて出る目は蛇か、はたまた鬼か・・・?」
言い終えた後もしばらくの間、春信はみつやが歩いていった後に目を向けた。
もし、この場で何かを発見するとしたら、みつやだろう、と春信は予想している。
春信はみつやの物事を見抜く力を強く買っていた。
みつやの目は快晴だ。闇に辺りが包まれたとしても、雲一つなく晴れ渡り、いつも先が見据えられている。
「まぁ、あいつはこんことを言っても絶対に信じないだろうけど」
春信は左手で頭のてっぺんを掻き毟りながら、嘲笑う。
笑うしかなかった。春信は自分が悪質な妄想狂なんじゃないかと疑っていたのである。自分の考えに根拠がない。
それは春信にとって、しつこく付き纏うジレンマだった。
外したいのに鍵がない。いくら遠くに捨てても、近くでまた拾ってしまう。そして何度突き刺しても、しつこく倒れない。
不死身のジレンマ。
ズバリ、春信は自分のジレンマを完全に殺す方法を知っている。しかし、実行するには力が足りない。
だから、春信は仮に無茶なことでも成し遂げようとするのである。
何故ならば、その果てにこそ求める力があると、春信は期待しているのだ。
立ち止まっている春信を朋康が不思議そうに覗き込んでくる。どうやら、少し心配させたらしい。
「あぁ、じゃあ後でな、トモ」
さっさと言い切って、春信はしゃんと背を向ける。
一体、どんな面してんだ、俺は。
春信は強く拳を握る。
不安を他人に悟らせるなんて御免である、馬鹿な弟を相手は特に。